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前回までのあらすじ
Curry Crew は日々の生活の中でもカリー調査を怠らない。貪欲にカリーに関する情報を人の話やネット上から収集している。
最近ネットサーフィンをしていてよく目にしたのが「得利」というカリーショップ。
中国は上海にある。
どうやら日本人が経営しているらしいのだが、中国にあってわざわざカリー専門店という特異な存在でありながら、日本からわざわざ食べに訪れたカリーフリーク達が口々に「すごく美味しかった」と評するその味はいかがなものなのか。
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さらに、上海はもともと欧米列強の租界地として成り立っていた土地であるから、欧米人と現地人である漢民族、そして経営者の日本人の味覚感覚がカリーにどのような形で昇華されているのかも非常に気になる。
気になるところには行かなくては気が済まない。
というわけでMarは師走の上海へと旅立つことにした。
幸い九州からは上海は近い。ものの1時間半ほどで到着する。気持ち的には東京に行くのとさほど変わらない。いつも通り「I Love Curry T-Shirt」に身を包み、福岡空港で飛行機のチェックイン時刻を待つ。数時間後には上海カリーだ。
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が、天はそう簡単にカリーを食べさせてくれなかった。中部国際空港「セントレア」から届くはずの上海行きの機材が積雪のため福岡に到着せず、予定していた便が欠航になったのだ。
しかたなく成田発の振替便で行くことになり、急いで羽田へと飛び、バスで成田へと向かう。福岡からみて成田は、上海と真逆に位置する。全く時間の無駄だったがしょうがない。
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2000kmほど遠回りすることになったが、兎にも角にもようやく飛び立てそうだ。
私としては中森明菜にあやかって成田空港北ウィングから飛び立ちたかったが、残念ながら今回は南ウィングから飛びたった。
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3時間ほどで上海に到着。かなり予定していた時刻より遅れての到着だ。機内食が定石通りまずかったせいもあり、早く「得利」へと駆け込みたい。
上海カリーへの逸る気持ちを抑えながら、上海磁浮列車(リニアモーターカー)に乗り、最高時速431kmでダウンタウンへと急行した。
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地下鉄2号線に乗り換え、東昌路(Dongchang Lu)で下車。事前にネットで調べた通りに道を進むと、「得利」を発見。しかしすでに閉まっていた。
がっかりしたが、飛行機の欠航で到着時間が遅くなったから仕方がない。気持ちを新たに明日来よう。上海カリーは近いようで遠いと感じる。
予め目星を付けておいたユースホステルに電話をしたら年末だったにもかかわらずベットは空いているということだったので、宿をそこに決めた(50元) (1元=15円)。
チェックインし、本日のカリーは諦め、代わりに静安区の有名レストランに行って上海蟹を貪り食う。
カリーが食べれなかったことの腹いせにヤケ酒ならぬヤケ蟹だ。
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次の日、起床後すぐに「得利」へと向かった。が着いてみると、なんと、店が取り壊されかけているではないか!
昨夜までただシャッターが閉まっていただけだったのに、もう店内ではダンボールに物を詰め込んでいたり、キッチン器具が引っ張り出されて解体されていたり、床には工具などが散乱していた。
なんということだ!この店のカリーを食べるためにわざわざ日本から訪中したというのに。
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落胆した。呆然と店の前で立ち尽くしていると、キッチン器具を解体しているおばちゃんが怪訝そうな顔をしながら、店の脇に貼られた一枚のお知らせ紙を指差した。
そこには日本語で次のように書かれていた。
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[張り紙要約]
諸般の事情により、2006年12月末日をもちまして一時閉店いたすこととなりました。諸般の事情とは、この地区一体の再開発に伴い移転することとなるのですが、現時点で移転先は決まっておりません。
浦東日式カレー店 得利カレー屋
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最悪だ。おそらく昨日が最終営業日だったのだろう。わずか1日だけ遅かった。飛行機の欠航が今になってかなり痛い。これで「得利」が移転した後、再度上海に来ないといけなくなってしまった。
こうなったらもうどうでもいい。ヤケ酒ならぬヤケカリーだ。自暴自棄になった私は、繁華街「南京東路」にあるどうでもいいような普通のレストラン「唐韻茶坊」に入った。
カリーがあるかどうかもわからなかったが、メニューを見ると一応「カリー明シャー飯(カリーミンシャーハン) (30元、かなり高い)」(カは口偏に加、リーは口偏に厘、シャーは「虫偏に下」と書く)というのがあった。
シャーはエビだからエビカリーということだ。たった一つのカリーメニューがエビカリーとは何とも中国らしい。早速注文して待つ。
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しばらくすると、鉄板の上にご飯がのせられ、その周りにルーをかけられてジュージュー鳴っているカリーが運ばれてきた。
ルーの上には巨大なミンシャー(エビ)が3つも乗っている。音と巨大な3体のエビとに最初は圧倒されてしまったが、よくよく見ると普通のファミレスに出てくるようなカリーじゃないか。
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焦げ始めたご飯をすくいルーと一緒に口に運んだ。うわっ、やはりレトルトだ。味はボンカリー以下。
続いて熱々の巨大エビも賞味してみる。こちらも予想通り完全な冷凍食品。
中国4000年の歴史を微塵も感じさせない最低レベルの粗悪カリーである。わざわざ中国まで来てこんな低俗なカリーを食べることになるとは。こんなことじゃカリーリテラシーの向上なんてありえない。
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最悪だ。
今回のカリー調査はどうもついてない。
しかし「I Love Curry T-Shirt」を着用している私はそのポリシーにかけて完食しなければならなかった。
少々気持ち悪い。
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夜は、気を取り直して上海のクラブへと足を運ぶことにした。本業の調査も怠らない。
宿にいたバックパッカーによると、上海のクラブは廬湾区にある復興公園周辺が最もアツいらしい。中国の著名人はもちろんのこと、日本からも有名なDJがたまに来てプレイすることもあるという。
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復興公園の近くの繁華街「淮海中路」沿いには、小室哲哉がプロデュースしている有名デカ箱クラブ「ROJAM」がある。
しかし、もちろんそんなところはパスして、公園内にある中規模のクラブ「官邸(GuanDii)」に入った(60元)。
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中はHIPHOPが流れていた。客でごったがえしていてフロアは歩けないほど。普段HIPHOPはあんまり聴かないが、かなりかっこよくてアガル。DJは中国人(たぶん)はもちろんのこと欧米人も回していた。
機材はターンテーブルがTechnicsでCDJはCDJ-800、ミキサーはDJM-600といった感じ。上海でもPioneerは人気のようだ。
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たまに中国語のテッパンHIPHOPナンバーがかかって中国人たちは大盛り上がり。私もそれを見て一緒に大盛り上がり。
お恥ずかしながらほとんど知らない曲ばかりだったが、Smells Like Teen Spirit や Rape me のHIPHOPリミックスもかかったりして、かなり楽しめた。Rockの波はHIPHOPフィールドにもきているのか。
2時間ほど踊って、宿に戻って寝た。
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ナイトクラビングで気分をリセットできた私は、次の日、普通の上海っ子の行く庶民店にカリーメニューがあるのかを調査するために、宿の近くにある「未来永和豆醤」という食堂に入った。
するとあるではないか、カリーメニューが。「カリー鶏焼飯(カリーチーツォーハン)」(12元)。
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注文して待っていると出てきたお弁当箱みたいなのに入った庶民カリー。
味は日本の家庭のカリーにそっくりだった。スプーンは無しで箸で食べるから、ものすごく食べにくい。メインのカリーよりも野菜炒めときゅうりの炒め物のほうが面積を占めているのが多少気になったが、それも結構美味しいのでよしとしよう。
上海にきてはじめてのまともなカリーだった。
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モチベーションを回復した私は、その足で次のレストランへと向かった。
そこは口うるさい上海人と口コミで評判を聞きつけた欧米人とでにぎわうという穴場レストラン「保羅酒楼」。
前の巨大エビカリーで痛い目を見ていた私は、今回に限り「I Love Curry T-Shirt」を着用しないまま店内に入る。
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メニューをみるとカリーがちゃんとある。「金律カリーシャー」(48元)。シャーということはそう、またエビカリーなのだ。
金律というのが何を表すのかはわからなかったが、英語表記でShrimp with Curry Sauce と書いてあるからエビにカリーソースがかけてある料理なのだろう。注文する。
出てきた料理は予想とは違うものだった。
私の予想では1,2匹の大きめのエビにカリーソースがかけられているのだろうと思っていたのだが、10匹以上の中くらいのエビ群にカリーソースがかけられたものだったのだ。
カリーライスのライスがそのままエビに代わったようなような料理だ。ちょっとこのエビ数に怖気づく。
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食べてみると、味はたしかにかなり美味しい。少々辛めであるが、特段中国特有のにおいがするとも言えない、どちらかというと日本的なカリーソースだ。
ただ少しだけカリーの濃度が濃い。最初は結構美味しく食べていたのだが、4匹目くらいから段々とイヤになってくる。ドロドロのカリーソースにご飯が恋しくなるのだが、そこにあるのはエビと少々のピーマンと玉ねぎだけ。
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エビを大量に次々と口に運ばなくてはならないので、気持ち悪くなってくる。しかもエビの殻を剥きながら食べないといけないので、手もベタベタになるしエビ臭くなって非常に食べにくい。
最後のほうは、オェッと戻しそうになったので、完食を断念することにした。
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「I Love Curry T-Shirt」を着用してなくてよかった。
あのT-Shirtに書かれたポリシーは、普段はカリー魂に火をつける誘発剤になるが、時にまずいカリーも完食しなくてはならないという強迫観念に襲われてしまう足かせにもなり得る諸刃の剣なのだ。
エビまみれのカリーに胃もたれしそうになりながら上海カリー調査は幕を閉じる。
さて、次はどこのカリー店に出撃しようか。。
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